· 

「恋愛」とは何か

 国語辞典はどれも同じ、と思ってはいませんか。

 実は、書店に並ぶたくさんの国語辞典には、それぞれにはっきりした編集方針があって、とてもにぎやかな世界を形作っているのです。

 たとえば、三省堂(さんせいどう)という同じ出版社から出ていて、どちらも国語辞典界で一・二を争う発行部数を誇るものの、とても対照的な個性を持った二冊の辞書があります。

 それは「三省堂国語辞典」=「その語がつまりどういうことかずばり言い表すことを追求した辞書」と、「新明解国語辞典」=「その語をことばでとことん説明し尽くすことを追求した辞書」の二冊です。

 ためしに「恋愛」という語の語釈を比べてみましょう。

 三省堂国語辞典(第七版)
【恋愛】(おたがいに)恋をして、愛を感じるようになること。

 …字面(じづら)からしてその通りです、としか言いようのない簡潔さです。しいて言えば(おたがいに)の部分にちょっとしたこだわりが感じられます〔一方的なのは「恋愛」ではない、ということでしょう〕。それに対して、

 新明解国語辞典(第八版)
【恋愛】特定の相手に対して他の全てを犠牲にしても悔い無いと思い込むような愛情をいだき、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分かち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安になるといった状態に身を置くこと。

 …思わず笑ってしまうほどの実感がこもっていますね。実は「新明解」といえばコレ、というくらい昔から数えきれないくらい引用されてきた有名な語釈です。


 それでは、せっかくなのでここで問題です。

 次に挙げるのは優等生的な正統派の代表といえる辞書ですが、[  ]に当てはまる漢字二字は何でしょう?

 岩波国語辞典(第八版)
【恋愛】(特に[  ]間で)恋いしたうこと。こい。


 答えは10行下に。









 答えは「男女」でした。最近はやりの「LGBTQ」を意識した語釈…なんでしょうか?